一輪だけでも
花壇にたった一輪の木瓜の花。
(だと思います。違っていたら教えてください)
冬のさなかの花壇はとても寂しい。
枯れた草木の葉がしおれて茶色になって散らばり、よけいに寒さを感じさせます。
その中にあって赤い木瓜(ぼけ)の花がロウソクの火のように咲いていました。
枯れた茎は何本かありましたから、その花だけが遅く咲いたのでしょう。
たくさんの花が咲き乱れている花壇は華やかで人目を引きます。
でも、その中でこの一輪だけをとりたてて愛でることはありません。
誰も目を向けようとしない、冬のさびしい花壇だったからこそ、この一輪に気がついたのでしょう。
たくさんの花の中の一輪と、季節外れの一輪と、どちらの場合も花が咲くことにかわりはありません。
咲きさえしたなら、きっと誰かの目を楽しませる。