みんなで見上げる
スーパーから帰ろうとすると、ミチコさんが素っ頓狂な声を上げました。
「ほら見て! 虹!」
東の空には鮮やかな七色の光が見え、その外側にも薄く立ち上がる双子の虹が。
二人して見上げていると、周りを通る人も気がついて、空を見上げます。
ケータイで写真を撮る人、自分の子どもに教える人。
きれいなものを一人で見て、一人で喜ぶより、誰もが同じものを見て喜ぶほうがいいのかなとふと思う。
そのほうが、自分にとってより嬉しいような気がする。
喜ぶという気持ちをシェアすることは、自分の喜びが減るということではなく、むしろ増幅されるのかも。
やがて虹が薄くなると、立ち止まる人も一人二人と減り、その場に漂っていた幸せ感も煙のように消えてゆきました。